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イトロ処理の原理
イトロ処理は、“燃焼化学気相蒸着(CCVD)”の応用技術です。 火炎の酸化力と火炎中の化学反応を利用し、固体表面を酸化(有機物であれば、極性基-水酸基、カルボニル基の導入)及び、火炎中に導入する有機ケイ素化合物の熱分解、酸化、還元、重合などによる化学反応生成物を固体表面に付着させます。 固体表面にはnm(ナノメートル)オーダーの酸化ケイ素(SiOn)が点在して、付着します。
PPシートの表面電子顕微鏡写真比較
イトロ処理前の表面
イトロ処理後の表面
実際は複雑系の火炎中で起こる化学反応の進行途中では、数多くの“ラジカル”が生成していると考えられます。
したがって、火炎の状態、有機ケイ素化合物の存在濃度、などにより反応状態は変わります。
また、火炎中の場所により反応状態も変わり、処理した固体表面状態も変わります。
イトロ処理(CCVD)は、2段階の工程を考えると理解しやすくなります。
(1) 火炎中の反応工程(活性化学種生成工程)
(2) 固体表面への定着工程
(1)は火炎の品質(酸化力、反応安定性、反応化合物濃度、温度)により制御されます。
(2)は固体表面の状態(綺麗さ、活性状態)、性質(無機物、有機物、酸化による変化など)により変わります。
また、火炎中の当てる場所、時間、回数、などでも変わります。
イトロ処理火炎について
イトロ処理に使用する火炎は、“予混合火炎”を使用しています。 火炎の空燃比を変えることができいろいろな火炎が作り出せ、またイトロ反応(燃焼反応)の状態を変えることができます。
バーナーは、炎孔並列式のラインバーナー構造です。 内炎が小さく、火炎反応帯が大きくなるような火炎が作れます。 イトロ反応は、火炎反応帯(火炎の内部)が活性です。 処理を行う場合、火炎の内部を処理物の表面に当てるように行うと質の良い処理ができます。
バーナー火炎中のイトロ反応
※火炎反応帯 ― 複雑な素反応中に生成するラジカルを介して、化学反応が起こるゾーン
密着性向上の原理
(1)基材への圧倒的な親水性(濡れ性)の向上
(2)基材表面の酸化による改質(プラスチックの場合、ポリマー鎖切断、酸化による極性基導入)
(3)酸化ケイ素の存在による吸着効果
すなわち、固体表面に液材(塗料、接着剤、粘着剤、樹脂など)がよく濡れ、固体表面の官能基と液材の官能基が接近し、反応しやすい状態を作っている。
熱の影響について
イトロ処理は高温(約1000℃)の火炎を使用し、処理する固体表面に火炎を当てる処理です。 火炎を固体に当てると燃えてしまうと思われますが、火炎の当て方により熱の影響をなくすことが可能です。 イトロ処理は、プラスチック、紙、エラストマー、フイルムなど熱に弱いものに対しても可能です。 これは処理スピードが速く、基材表面にかかる熱が少ないためです。
PP機材の表面上を、バーナーが2回通過(往復移動)してイトロ処理実施。 処理時のPP機材表面の温度変化を高感度熱センサー(0.3mm熱電対)にて計測